会社で保険に加入したいのですが、 どのように選ぶのか、また誰に相談したらよいのか教えてください。

会社で保険に加入したいのですが、 どのようなことを念頭において選べば良いのでしょうか? また、誰に相談した方が一番良いのでしょうか?

まずは、加入者であるあなたが理解している事が重要です。

保険の加入
保険の設計書などに 最終的には税理士に確認してくださいなどと書いてあったり、税理士事務所が保険代理店をやっているなどから、税理士が保険に詳しいと思われていますが、 実際はそうでもありません。保険に加入した場合の税の取り扱いについて詳しいだけで、保険そのものに詳しいわけではありません。

また 保険会社の営業の方も、 特に若い人などは、このような保険を、このような説明をして売りましょうと教育されているだけで、実はよくわかっていなかったりします。 保険代理店は優秀なセールスパーソンが独立している事が多いので外れは少ないと思いますが、自社の営利優先に成りがちな事と、ダイレクト保険ほどコスパは良くないかと思います。ただし、多少のコスパよりも重要な事は、加入者であるあなたが理解している事だと思います。

押さえるべき4つのポイント

まず以下の4つのポイントを押さえること(自分で理解すること)が、重要です。(難しいと感じるなら④はとりあえず後回しでも良いです)

①保障:どうなった時に(保険事故)、いくら(保険金額)貰えるか?
②保険期間:一生涯の保障が欲しいのか、一定期間で良いのか?
③保険料:①、②次第で、そのコストである保険料が変動します。
④解約返戻金、満期金:これもどうしたいかで③のコストである保険料が変動します。

保険のパンフレット、設計書などにこの4項目を明示してくれれば分かりやすいのですが、メリット・魅力的に見える事・加入意欲を搔き立てる事を優先し、不利な事・知られたくない事・知られたら加入を躊躇する事を小さい字で隅っこに記載されたりしていますので、①、③は明記してありますが、その他は見つけるのに時間がかかります。

具体例で考えていきましょう

子どもが小さいときに自分が死んだらと考えたときに数千万円の保険金は欲しいでしょう(①)。ではその保障が必要な期間は一定期間ですか、生涯ですか?(②)

子どもが小さい間だけで良ければ(社会人になるまでなど)、その期間だけの定期保険で良いのではないでしょうか?そちらの方が保険料(③)は安くなります。
せっかく保険を掛けているのだから保険期間を生涯として(終身保険)最終的に遺族に残したいのであれば、それなりの保険料を払う必要があります。極端な例で言えば、保険金2,000万円の終身保険に加入し、85歳で死ぬのであれば2,000万円程度の保険料を払う必要があります。支払った保険料のほとんどが戻ってきて、しかも若くして万一死亡した時の保障まであるのだから、お得だと思えばそれで良いでしょう。
逆に掛け捨ての保険料が安い定期保険に加入して、貯蓄は別にするという考え方もできます。
がんになった時に治療費を補填してくれる程度の数百万円保険金(①)がもらえる保険があります。ではその保障が必要な期間は一定期間ですか、生涯ですか?(②)
そのために負担してもいい保険料は年間いくらぐらいでしょうか?(③)

生命保険同様子供が成人するまで家計に余裕がない時にがんの治療費を補填してくればありがたいというのであれば保障期間を限定とすることにより保険料を抑えることができます。保障期間中にがんにならなければそれまで払った保険料は基本0になります。
これを払い損になるから嫌だというのであれば、満期保険金または解約返戻金がある保険が良いのではとなるかもしれませんが、当然ながらその分保険料は上がります。保障期間が終身であれば多くの人はがんで亡くなる確率は高いため、若い間はそれなりの保険料で済むものの、極端な例で言えば、85歳までがんにならなければ貰える保険金以上の保険料を払う必要があります。

別の観点から、そもそもがんの治療費はいくら必要か把握していますか?
先進医療特約は、保険料500円から1000円と安いにもかかわらず保険金は350万円とお得に感じますが、本当でしょうか。私は詳しくありませんが、本人が望めば誰でも受けられるものではないと聞いたこともあります。貯金が3000万円ある人が、がんになった時に300万円もらえる保険に入る必要があるのでしょうか?
税引前利益が3,000万円の会社が、保険会社の営業の方から
[1]死亡保険金1,000万円(①)、保険期間が30年(②)で、保険料月額3万円(③)の全額が経費(+α)となり、最高解約返戻率は50%超70%以下(④)の生命保険とそれに合わせて、
[2]3大疾病となった時に保険金1,000万円(①)、保険期間が終身(②)で、保険料月額7万円(③)全額が経費(+α)となり、最高解約返戻率50%以下(④)の生命保険の提案を受けました。

どちらも全額経費となるため年間120万円経費を増やせて節税となるのですが、[1]途中解約の場合累計支払保険料の約半分しか戻ってこない事と、30年で死亡しなかった場合累計支払保険料は戻ってこない事になります。
[2]退職まで3大疾病にならなかったら、あるいは別の理由で死亡したら保険金は貰えず、途中解約した場合でも累計支払保険料の半分以下しか戻ってきません。
俗に全損保険と言いますが、節税というよりも本当に損となるかもしれません。損することで税金が安くなるのは当然です。
これらの保険に現預金が5,000万円ある会社(この金額が十分かどうかは年間売上にもよりますが)が入る必要は無いかもしれません。

まとめ

キャッシュリッチの方や会社などはよくよく理解すると保険に入る必要がないのでは?となる事も多々あります。保険のプロの方から見れば上の例(特に保険金額、保険料、保険期間、返戻金のバランス)は、このような事はあり得ないなどおかしな例が多々含まれているかもしれません。
ただし、私自身が上記のポイントをおさえる(設計書の中から探す)ことにより、保険に対する理解が深まりましたので、1つの考え方としてご参考になれば幸いです。
【2023年8月】

このコーナーは、実際に受けた質問を一般的にアレンジしたものの他、想定問答を掲載しています。
作成時の税制などに基づいており、その後の税制改正などにより、取扱いが変わる場合がありますので、あくまで参考情報として、自己責任での運用、又は当事務所とご相談(有料)の上での運用をお願いいたします。