単純に、法人税住民税及び事業税額と、個人に課税される所得税及び住民税を比較すれば良いのか?
社会保険料も含めて考えるのか?
社会保険料のうち健康保険料のみ考えるのか?厚生年金も含めて考えるのか?
代表者家族全員で報酬を分配できるのか?
法人に利益を残し税負担をするのと、役員報酬で個人が税負担するのは、どちらが得?
法人に利益を残して法人税を負担する場合と、役員報酬として個人に所得を移転して所得税を負担する場合のどちらが税負担が軽くなるのでしょうか?その匙加減はどのように考えた方が良いのでしょうか?
ケースバイケースで具体的な事例がないと、非常に説明が難しいです。
具体的な税額、社会保険料を比較する
一番手っ取り早くて確実なのは、給料実額をいくつか想定して、具体的な税額、社会保険料を比較してみる事です。
ですがここでは、あくまで目安としての考え方を、ご説明してみたいと思います。
(社会保険料はここでは考慮しません。)
まず、法人税住民税及び事業税(以下法人税等といいます)の実行税率は、
難しくなりますが、もうちょっと詳しく説明しますと、
ですがここでは、あくまで目安としての考え方を、ご説明してみたいと思います。
(社会保険料はここでは考慮しません。)
まず、法人税住民税及び事業税(以下法人税等といいます)の実行税率は、
ざっくりと中小法人(資本金1億円以下等)に限定すると(平成28年時点です)、
所得400万円以下約22%(平成27年4月1日以降開始事業年度)
所得800万円以下約24%(平成27年4月1日以降開始事業年度)
所得800万円超約35%(平成27年4月1日以降開始事業年度)
比較する所得税の税率は、超過累進税率で下記の通りで、()内は住民税を加味した割合で、大雑把に10%を加算した後の税率です。
所得400万円以下約22%(平成27年4月1日以降開始事業年度)
所得800万円以下約24%(平成27年4月1日以降開始事業年度)
所得800万円超約35%(平成27年4月1日以降開始事業年度)
比較する所得税の税率は、超過累進税率で下記の通りで、()内は住民税を加味した割合で、大雑把に10%を加算した後の税率です。
195万円以下5%(15%)
195万円を超え330万円以下10%(20%)
330万円を超え695万円以下20%(30%)
695万円を超え900万円以下23%(33%)
900万円を超え1,800万円以下33%(43%)
1,800万円超40%(50%)
さてここで、単純に税率を比較して検討すれば良いのでしょうか?
違います。理由は法人税等と所得税・住民税では税率を乗じる課税標準が異なるからです。
195万円を超え330万円以下10%(20%)
330万円を超え695万円以下20%(30%)
695万円を超え900万円以下23%(33%)
900万円を超え1,800万円以下33%(43%)
1,800万円超40%(50%)
さてここで、単純に税率を比較して検討すれば良いのでしょうか?
違います。理由は法人税等と所得税・住民税では税率を乗じる課税標準が異なるからです。
難しくなりますが、もうちょっと詳しく説明しますと、
☆役員報酬を増減させることによる法人税等への影響額は、役員報酬の増減額に適用される法人税実効率をそのまま乗じれば算定されますが、
☆役員報酬を増減させる事による所得税住民税への影響額は、役員報酬額から給与所得控除、社会保険料、基礎控除などの各種控除後の金額に、(適用される)所得税・住民税率を乗じて算出されるからです。
比較方法
ではどのようにして比較したら良いのでしょうか?
所得税・住民税の実額を、税率を乗じる前の課税標準ではなく、役員報酬で割り戻した所得税等の実効税率と法人税等の実効税率を比較してみます。
【具体例】
月額報酬90万円の場合、給与収入1,080万円
1,080万円に対する給与所得控除額は224万円
社会保険料やその他各種控除は無視して、基礎控除38万円だけ考慮すると課税所得は818万円になり、所得税・住民税の額は2,063,400円となり、これを給与収入1,080万円で割り戻すと19.10%になります。この19.10%と摘要される法人税率を比較すると有利不利の判定はできそうです。
しかしながら話はこれで終わりではありません。実効税率の比較には欠陥があります。
所得税・住民税の実額を、税率を乗じる前の課税標準ではなく、役員報酬で割り戻した所得税等の実効税率と法人税等の実効税率を比較してみます。
【具体例】
月額報酬90万円の場合、給与収入1,080万円
1,080万円に対する給与所得控除額は224万円
社会保険料やその他各種控除は無視して、基礎控除38万円だけ考慮すると課税所得は818万円になり、所得税・住民税の額は2,063,400円となり、これを給与収入1,080万円で割り戻すと19.10%になります。この19.10%と摘要される法人税率を比較すると有利不利の判定はできそうです。
しかしながら話はこれで終わりではありません。実効税率の比較には欠陥があります。
現状の法人・個人間での所得配分有利不利の判定は確かに実効税率の比較で可能ですが、
その匙加減(分岐点)を見極める事はできません。
上記の給与収入1,080万円の課税所得818万円に対して所得税・住民税2,063,400円はどのように課税されているかと言いますと、
上記の給与収入1,080万円の課税所得818万円に対して所得税・住民税2,063,400円はどのように課税されているかと言いますと、
所得税は超過累進税率で課税されますから、
195万円以下に対して5%(住民税+10%)
195万円超330万円以下に対して10%(住民税+10%)
330万円超695万円以下に対して20%(住民税+10%)
695万円超900万円以下に対して23%(住民税+10%)
当事務所では決算期ごとに、次期役員報酬の打合せを実施しております。
の合計額が、所得税額等として算出されます。
そうすると給与収入1,080万円に対して課税されている最も高い部分の税率(これを限界税率といいます。)は33%です。
つまり1,080万円のうち、一部は33%の税率が課税されているという事であり、法人税・住民税の所得800万円以下よりも高い税率が課税されている訳です。
今回は細かい論点をあえて省略していますが、とりあえず結論を出せば、法人に適用されそうな税率と、上記で説明した所得税の限界税率を比較して、役員報酬を決定すれば、より税負担が軽くなると言えるでしょう。
つまり1,080万円のうち、一部は33%の税率が課税されているという事であり、法人税・住民税の所得800万円以下よりも高い税率が課税されている訳です。
今回は細かい論点をあえて省略していますが、とりあえず結論を出せば、法人に適用されそうな税率と、上記で説明した所得税の限界税率を比較して、役員報酬を決定すれば、より税負担が軽くなると言えるでしょう。
長くなりましたので、社会保険も含めた検討は割愛させて頂きますが、現実的にどうするかにつきましては、
あまり理屈や理論値に固執せず、率での比較は目安程度にとどめ、冒頭でも申し上げましたように、大体の目星を付けた上で、いくつかのパターンでシュミレーションを行い、実額を認識することが大事です。
当事務所では決算期ごとに、次期役員報酬の打合せを実施しております。
このコーナーは、実際に受けた質問を一般的にアレンジしたものの他、想定問答を掲載しています。
作成時の税制などに基づいており、その後の税制改正などにより、取扱いが変わる場合がありますので、あくまで参考情報として、自己責任での運用、又は当事務所とご相談(有料)の上での運用をお願いいたします。
作成時の税制などに基づいており、その後の税制改正などにより、取扱いが変わる場合がありますので、あくまで参考情報として、自己責任での運用、又は当事務所とご相談(有料)の上での運用をお願いいたします。